成年後見制度とは?

成年後見制度とは、本人の意思決定を支援するための制度です。自ら判断することが難しい状況になっても、本人の希望に添った生活が続けられる可能性が高まるため、あらかじめ検討しておけるといいでしょう。

例えば、高齢者の生活に関わる法律行為には、下記のようなものがあります。

  • 要介護申請
  • 介護事業者や医療事業者との契約
  • 施設入居の契約
  • お金の引き出しや支払い
  • 不動産の処分

こうした行為ができるのは、本人または本人から任された代理人のみとなります。成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。いずれも申請してから2~3カ月かかります。

●法定後見制度

法定後見制度とは、本人にすでに判断能力がない場合に利用する制度です。本人が判断できないため、裁判所が判断をすることになります。

  1. 管轄の家庭裁判所に申し立てる。申し立てできるのは本人、配偶者、4親等内の親族が基本となる(身寄りがないなど例外的に市長ということもありますが、できるだけ本人申し立てできるよう努力した方がスムーズ)
  2. 福祉関係者が本人情報シートを作成する
  3. 医師が診断書を作成する

家庭裁判所は、これらの申し立てと病状をもとに、「補助」「保佐」「後見」のいずれかに分類します。

補助:3類型の中で、本人の判断能力が最も残存している場合に分類されます。お金の管理などが若干不安になってきた、という程度の方が当てはまります。
保佐:日常的なことは自分でできるが、お金の管理や不動産の処分などには手伝いが必要という程度の方が当てはまります。
後見:家庭裁判所が判断する部分がかなり大きくなる方が当てはまります。

「誰が後見人になるのか」も裁判所が決める

法定後見制度の課題と指摘されることも多い点ですが、「誰を後見人にするか」も家庭裁判所が決定します。本人と関係が深い親族がいても、後見人に選ばれることは多くなく、76.8%は親族以外の専門職が任命されるというデータが出ています。

専門職を後見人とする場合、月2~5万程度の報酬が発生します(金額も家庭裁判所が決定する)。本人のお金が、後見人への報酬に使われてしまうことになるのです。また、後見人をしている専門職による横領事件などが話題になった結果、本人の財産が本人のために使いづらくなっている側面もあります。

そこで重要なのが、本人が元気なうちに準備をしておくことです。準備として利用できるのが、「任意後見制度」です。

●任意後見制度

本人に判断能力があるうちに、将来キーパーソンになってほしい人と締結しておくのが「任意後見契約」です。

誰に任せたいか、どんな医療・介護を受けたいかといった意思を伝えておけるのがメリットで、本人が自分1人で財産を管理することに自信がなくなってきたと思ったタイミングで、事前に結んでおいた財産管理委任契約を開始します。その後も、本人の指示・監督の下、キーパーソンが財産管理を行います。

本人が判断能力を失ったときには、家庭裁判所に申立てをすれば、あらかじめ任意後見契約を結んだ受任者が後見人に就任できます。

◆後見人の立場でできること

財産管理(本人の財産を減らさずに維持して本人の生活を保つこと)

  • 預金の管理
  • 払い戻し
  • 支払い
  • 保険金の受け取り
  • 周囲で相続が起きたときの手続き(ただし減らしてはいけないので、放棄したり贈与したりはできない)など


身上の保護(生活、医療、介護にかかわる法律行為)

  • 入退院手続き
  • 施設の入居契約
  • 住宅の確保
  • 生活環境の整備
  • 生活保護の申請(生活保護だと報酬が出せなくなるので専門職の後見人を付けるのは難しい可能性がある)など

◆後見人の立場ではできないこと

家族の利益になっても本人の(経済的な)利益にならないこと
例:
相続税を減らすために本人の財産を減らしておきたい→×
例:施設に通う際にタクシーを使い本人のお金から出す→×
例:祖母が家族全員分のお金を出して毎年恒例の温泉旅行に行く→×

今までできていたことができなくなるので家族から拒否感があることもあるが、本人が判断できないので勝手にはできない/本人にとってリスクがあることはできない
例:
本人の貯金で株を運用して増やそう→×
例:手術をすることを本人の代わりに判断するなど、治療に対する同意を代行する→×
※本人や家族の意思を聞いて医師が判断すること

◆その他できること・できないこと

入院時や施設入居時の身元引受人
退去時の対応をしたり、不払い時の保証人になる→禁止はされていないが、不払い時に後見人が自腹で払わなければいけなかったりするので、引き受けたがらない後見人は多い可能性がある

不動産を売却するケース
法定後見の場合、自宅不動産の売却は家裁の許可が必要(本人のために必要かどうかがポイント。施設入居の現金が捻出できないなど、売る必要性があれば認められることもある)

死後の事務業務(施設や病院の費用精算や施設にある私物の処理、火葬埋葬など)
後見人の契約期間は本人が存命の間なので、本来は契約内容には含まれませんが、他に手配する人がおらず、後見人が手続きせざるを得ないケースが多くあります。2016年までは、契約外の期間のことになるため本人のお金を使うことができませんでしたが、現在は家庭裁判所の許可を得れば、本人のお金を使って葬儀や埋葬の契約ができるようになりました。ただし、本人の死後は後見人の報酬などはなくなるため、後見人がボランティアで行う状況は変わっていません。最近は、死後の手続きを事前に依頼する「死後事務委任契約」を結んでおくケースもあります。

監修:西沢優美(にしざわゆみ司法書士事務所司法書士)

京都大学法学部卒業。祖父母にかわいがられた経験から、「高齢者の方々の役に立つ仕事がしたい」という思いで司法書士を志す。2006年司法書士試験合格、翌年司法書士登録。神奈川県内の司法書士法人に13年間勤務し相続手続き・遺言作成・後見業務を中心に担当した後、2020年5月に「にしざわゆみ司法書士事務所」を開業。法律上の問題を気軽に相談できる場所をつくるべく、神奈川県藤沢市の地域交流スペースで週に1度「まちの法律相談所」を開くなどの活動も続けている。

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