クラウドファンディングで夢を叶える! 成功の秘訣

  1. イベントリポート

こんにちは。SHIP第1期生のYukiです。今回は、イベント「クラウドファンディングで夢を叶える!」をリポートします。

最近、何かと話題のクラウドファンディング。SHIPでは、皆様の様々な疑問にお答えするため、株式会社CAMPFIREにて社会課題に特化したクラウドファンディングサービス「GoodMorning」を立ち上げた東藤泰宏さんをお呼びして、クラウドファンディング成功者である医師の西智弘さん(SHIPメンバー)と石井洋介さん(SHIP運営代表)と一緒に、クラウドファンディングの入門編から実践編までお話しいただきました。

クラウドファンディングってそもそも何?

まずは東藤さんにクラウドファンディングについて聞いてみましょう。クラウドファンディングとは、その名の通りクラウド(群衆)からファンディング(資金調達)するという、インターネットを通して不特定多数の人から資金を募ることを指します。

クラウドファンディングにおける資金調達には、以下の2つがあります。

  • All or nothing(オールオアナッシング) :目標額を達成しなければ出資金は出資者に全額返金される
  • All-in(オールイン):目標額に達しなくても、出資してもらった分だけもらえる

このように提示されると、ついどちらが良いのか、どちらが主流なのかと考えてしまいがちです。ですが特に偏った傾向はなく、それぞれに利点、欠点があるため、自分の目的や計画に合わせて選ぶのがベスト!だそうです。

ここで忘れてはいけないのは、クラウドファンディングはあくまでも資金調達の手段の1つであるということです。資金調達の方法は、クラウドファンディングだけではありません。融資、投資、助成金、労働など沢山あります。資金調達で解決できることは、サクッと解決して、大きな目標に向かうことが大切、と強調されていました。

また、いきなり不特定多数に公開されるのは不安、でもクラウドファンディングに興味がある、という方に、CAMPFIREにはPolcaという、友人、知人同士でのみ楽しめるフレンドファンディングのサービスもあります。Polcaでは、個々の事業に対して個別のURLが発行され、そのURLを共有した人のみが参加できます。見ず知らずの人に拡散されないので、炎上の心配もありません。スマホアプリで簡単にでき、出資も500円からとなっています。Polcaを使って、クラウドファンディングに挑戦する前に、身近な人のリアクションを見る、という使い方もできそうです。Polcaは、単発のイベントに向いており、東藤さんはその簡単さを示すために、「打ち上げ代を募ったこともある」と言っていました。

クラウドファンディングを始めたいのだけど、何からすればいいの?

現在、日本にはクラウドファンディングの業者が170社ほどあるそうです。こんなに沢山あると、どの業者を選べばいいのか、何が違うのか分からなくなりますね。東藤さんによると、「それぞれの事業者によって強みはあっても、基本どこでもOK!」とのこと。出資者は事業者ごとのプラットフォーム単位よりも、個々の事業単位で選ぶ場合が多いのです。事業者の間には、手数料を始め様々な違いがありますが、一番大切なのは本人と担当者のコミットだそうです。

――と言われても、170社もあるともなると困ってしまいますね。やはりシステム面、オペレーション面など総合的に判断して上位3社プラス1社、くらいの中から選んでおけば間違いはない、とは言えるそうです。

では、クラウドファンディングを達成するにはどうしたらいいの?

クラウドファンディングで出資してくれるのはどのような人でしょうか。東藤さんによると、出資者のデータを分析した結果、やはり現実として出資してくれるのは圧倒的に友人、知人でした。

実際、事業者のトップページにアクセスした人の5%しか、個別の事業にアクセスしていないという現実もあります。

見ず知らずの人にまでたどり着く可能性は低いですが、決してゼロではありません。また、友人、知人の出資のみで達成できるものでもありません。今までの友人知人全部から集める気持ちで、そして見ず知らずの人にも届けるようなつもりで取り組むのが大事だそうです。

クラウドファンディング成功の秘訣は?

では次に実際にクラウドファンディングに成功した西智弘さん、石井洋介さんの事例を取り上げてみましょう。

まずは西さんから。西智弘さんは、総合病院でがんの専門医として勤務する一方、2017年4月に一般社団プラスケアを起業し、医療者と市民とが気軽につながれる場所「暮らしの保健室」を運営しています。その際の資金調達に、クラウドファンディングを利用しました。

西さんが「暮らしの保健室」を立ち上げたきっかけは、病院での「医師」対「患者」といった関係性の中だけでは解決できない問題と向き合いたい、という思いでした。そこで、人々が病院に行くほどではないちょっとした健康上の悩み、また大きな病気を抱えて生きていく上での悩みなどを街中で気軽に相談できる場を作りたい、という気持ちが芽生え始めました。実現までには様々な困難がありましたが、患者さんやご家族の声に押され、病院の外で「医師」対「患者」ではなく、「人」対「人」の関係を作る場として暮らしの保健室を立ち上げたのです。

事業者にCAMPFIREを選んだ理由は、まず当時の手数料が安かったことや、介入が多すぎず、担当者が自由に決められる部分が大きかったことだそうです。反対に、サポートが充実している、初心者でも始めやすい業者もあります。やはり自分に合った業者選びも、目標達成のポイントですね。

西さんはクラウドファンディングで資金調達を始める前から暮らしの保健室の実現は決めていたので、目標金額を達成しなくても資金を調達できる「All-in(オールイン)」形式を選びました。1度目は目標金額に達成しなかったそうですが、2度目は反省を生かし、まずは写真を多めにしてページを見やすくするような工夫や、また出資者本人にも参加してもらうために、出資すると一部お金が戻る仕組みを作って、目標額を達成しました。

次に、SHIP運営代表でもある石井洋介さんの紹介をします。石井さんは、自身が潰瘍性大腸炎という難病を抱え、その経験がきっかけで医師になりました。しかし、夢を叶え消化器外科医として働く中で、手術をする頃には癌が進行していて、助けられなかった患者さんを何人も見てきました。そこで、医師が助けられない程に病気が進行する前に、患者さん自身に異変に気付いて貰うにはどうしたらよいか、また医療情報をもっと身近に、面白く、分かりやすく届け、大腸癌のことをもっと知ってもらいたいという思いを抱き、日本うんこ学会を立ち上げました。学会では、課金の代わりに排便の報告をするスマートフォンゲーム「うんコレ」を開発しています。その開発費用を集める際に、クラウドファンディングを利用しました。

石井さんは、まずスマートフォンゲームの開発予算が1億円と言われ、事業を一から起こすことの難しさを実感していました。そこで100円出してくれる人を100万人集めるという意気込みでクラウドファンディングに挑戦したそうです。達成できないならやる意味がないと考え、目標金額を達成できなければ1円も資金調達ができない「All or nothing」形式を選びました。石井さんのクラウドファンディングは、事前に様々な記事でうんコレについて紹介していただいたこと、また友人、知人をはじめあらゆる方面にアピールした結果、無事目標金額を達成しました。

2人の話をお聞きして、共通していた成功の秘訣は、第一に「情熱」です。2人が医師として働く中で、「医師」「患者」「病院」という個別の関係性や場所を超え「社会」と「人」を動かしたいという熱い思いが、今回のクラウドファンディングというテーマを超えて伝わって来ました。そして、もう1つは「客観性」です。残念ながら、情熱だけではお金は集まりません。見る側の興味を惹き、ぜひこのプロジェクトに参加したいと思わせる工夫も大切です。お2人のプロジェクトには、リターンを始めこのような工夫や仕掛けが散りばめられていました。

今回は「医療とクラウドファンディング」がテーマでしたが、人を動かすクラウドファンディングでは、この2つは全てに通じる秘訣ではないでしょうか。

とはいえ、まだまだ色々気になりますね。次は今回のイベント参加者から出た質問を紹介します。

・人からお金を貰うことに罪悪感があるのですが、どのように乗り越えましたか?

クラウドファンディングは、米国で始まりました。米国では、例えば「こんなステキなバーベキューセットみんなも欲しくない? でも作るにはお金が必要なんだ。だからちょっとでもいいから協力してくれ」というようなガジェット系から徐々に根付いていきました。

一方日本では、クラウドファンディングが立ち上がる直前に東日本大震災が起こり、チャリティー系のプロジェクトが必然的に多く立ち上がりました。そのため、今後のクラウドファンディングには、チャリティではない個人のプロジェクトを立ち上げる事に対する罪悪感や周囲の批判とどう向き合うか、また出資者との信頼関係をどう構築していくか、などが大きな課題となるでしょう。

実際に挑戦した石井さんにも、はじめは人様にお金をもらう後ろめたさや、友人、知人に知らせる際も「こういう時だけ連絡してくる奴だと思われたくない」という気持ちがありました。しかしやっていくうちに、自分で作ったものを買ってもらって「美味しかった!」という言葉が嬉しくてまた頑張れた「学園祭で角煮を売った時の気持ち」や「路上ライブで投げ銭を貰うような感覚」が芽生え、後ろめたさはなくなっていった、とお話ししていました。

やはり、プロジェクト実現のために人からお金を集めるという視点より、自分が出資者や社会に対して何を提供できるのか、という視点でプロジェクトを立ち上げることが大切だと言えそうですね。

まとめと感想

クラウドファンディングは、プロジェクト実現のための資金調達の1つとして急速に広まっていますが、日本ではまだまだ「炎上」をきっかけに知ったという人も多く(私も実はその1人でした)、根付くまでには様々な課題があるなと感じました。まずはPolcaのような身内で気軽に使えるツールを利用して、友人、知人同士で小さな一歩を踏み出し、そして見た人の心を動かせるようなプロジェクトにつなげていけたらいいのではないでしょうか。私もクラウドファンディングという言葉は知っていましたが、今回3人のお話を聞き、医療者から社会にアプローチするプロジェクトも立ち上げられるのだと初めて知りました。私はまだ医師として働き始めたばかりですが、病院、医療者、患者といった「個」の関係で解決できない問題に当たった時、また社会のために何かしようと思った時「聖なる一歩」を踏み出すために、クラウドファンディングによる資金調達を選択肢の1つに加え、大きな夢の実現につなげていければと思います。(永山有希=都内大学病院研修医・精神科志望/日本医師会認定産業医)

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