ACP普及のためのボードゲーム「エンディングゲーム」

ACP普及のためのボードゲーム「エンディングゲーム」

株式会社omnihealが運営するヘルスケアコミュニティ「SHIP」有志メンバーとともにアドバンス・ケア・プランニング(ACP;Advance Care Planning)について考える機会を提供するボードゲーム「エンディングゲーム」を制作しました。2022年には、大阪府豊中市と協業。支援を受けて製品版も完成しています。

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誰にでもおとずれる「人生の最期」。自分らしい豊かな人生をおくるためには、人生の最期をどう過ごしたいか、あらかじめ考えておくことが大切です。アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、患者さんを主体にそのご家族や近しい人と、医療・ケアに携わる人たちが繰り返し話し合い、患者さんの意思決定を支援するプロセスのことを指します。「人生会議」という愛称もあります。

ACPは、どのように人生の最期を迎えるか考える上でとても重要なプロセスです。例えば、口から飲み込む力(嚥下機能)が弱ってきて、ご飯を食べられなくなった場合、栄養を取る方法として胃ろうや点滴が選択されることがあります。そうした可能性が出てきた場合に、「もし、口からご飯が食べられなくなったらどうする?」と、ご本人・ご家族の思いと、専門的な知識を持つ医療者が意見を交えながら話し合います。

また、具体的にどのようなケアを受けるかを計画するだけでなく、ご本人が医療や介護を受ける上でどのようなことを大切にしているか、例えば「できるだけ痛みがないようにしてほしい」「できるだけ最期まで自宅で家族と過ごしたい」といった価値観をあらかじめ共有しておくことも大切です。そうしておくことで、本人が意思を示せなくなっても、本人の希望に沿ったケアを行える可能性が高まりますし、代わりに意思決定するご家族の心理的負担も軽減されることが期待されます。

しかし、老いによる機能低下や、死を思わせる話は縁起が悪いとされ、たとえご家族であっても直接的に話すことを敬遠されることが多いのではないでしょうか。

そういった背景から、なかなかACPが浸透しないことに対して課題感を持っていたSHIPのメンバーが、「ゲームを使って、ACPの認知度を向上させられないか?」と提案し、今回の「エンディングゲーム」制作に至りました。

他人の人生を通して自分の「最期のあり方」を考える

ボードゲームのコンセプトの軸は、「他者の人生を追体験する」。これは、「自分自身の死に目を向けるという体験だと重くなりすぎてしまう」「恋愛リアリティショーや体験談のように、他人の話だと思ったら客観的に考えやすくなるのではないか」といった意見をもとに決まりました。

ゲームでは職業や性格が設定された6人のキャラクターから1人を選び、すごろく形式で進めます。「このキャラクターならどう考えるだろう」とポイントごとに考え、同時に自分の人生にも思いを馳せてもらえるように設計されています。

❶1人1枚ずつ人間カードを選び、キャラクターを設定する(裏を見てよい)
❷サイコロをふり、病気カードを引く(裏は見ない)
1、2:高血圧症
3、4:糖尿病
5、6:高脂血症
❸アシストカードを購入するかどうかを決める(任意)
❹ゲーム終了後、お金の精算と人生の振り返りをする

2022年には、大阪府豊中市と協業し、支援を受けることとなりました。豊中市健康医療部健康政策課・都市経営部創造改革課の皆さんや大阪大学でACPの研究をされている方、ACPに精通されている司法書士の方の協力も得ることになり、いくつかの実証実験を経ながら、ボードゲームが形になってきました。

高いクオリティの製品版も完成し体験会を開催

内容はさらにブラッシュアップされ、ついに製品版の制作にも取り掛かることになりました。製品版は、一般的に売られているボードゲームのように、箱や駒も高いクオリティを目指して制作。2024年2月に完成しました。

エンディングゲームは現在、製品版も完成し、体験会も実施できています。

今後は、エンディングゲームの体験とACPに関する講演をセットにした体験会を、ACPに課題を感じている自治体や団体向けに開催し、ACPの浸透に貢献していきたいと考えています。

体験会に限らず、エンディングゲームにご興味のある方はacpあっとomniheal.jp(「あっと」のところを「@」に変更してください)までご連絡ください。