口からの食事が困難または不可能になった場合、栄養摂取を確保するためには代替的な方法が必要となります。このような状況では、経管栄養や静脈栄養が用いられることがあります。これらの方法は、患者が必要な栄養を効率的に、かつ安全に摂取できるように設計されています。
経管栄養
経管栄養は、特殊な栄養液を直接胃や小腸に送り込む方法です。これにはいくつかの異なる手法があります。
- 鼻腔経管栄養 (Nasogastric Feeding): 栄養チューブを鼻から胃に挿入します。比較的短期間の栄養補給に適しています。
- 胃瘻 (Gastrostomy): 腹部の小さな切開を通して胃に直接チューブを挿入します。長期的な栄養補給に用いられます。
- 空腸瘻 (Jejunostomy): 胃を迂回して小腸にチューブを挿入します。胃に問題がある場合に選択されます。
静脈栄養
静脈栄養(全静脈栄養、TPN)は、栄養溶液を直接血流に送り込む方法です。これは、消化管が全く機能していない場合や、非常に高度な栄養管理が必要な場合に用いられます。静脈栄養は、必要なすべての栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、水分)を含む溶液を使用します。静脈栄養には種類が主に2つあります。
- 末梢静脈栄養:腕や脚にある末梢静脈に短いカテーテルを挿入して栄養を直接注入する方法です。一般的にイメージされる点滴のように、たいていは腕にある静脈をから注入します。ただ、常にこの方法で栄養摂取がされることは少なく、脱水状態等、一時的に弱ってしまった場合に使われることが多く、1日当たりに摂取が行えるカロリー量も少ないのが特徴です。
- 中心静脈栄養:心臓の近くにある太くて血流の速い静脈を中心静脈といい、一般的には鎖骨下を通る静脈から中心静脈にカテーテルを挿入して、栄養を直接注入します。経静脈栄養が必要とされる期間が、末梢静脈栄養よりも長く見込まれると(目安として10日以上)、中心静脈栄養が選択されることがあります。末梢静脈点滴と比べて、1日あたりに摂取が行えるカロリー量が多いのはメリットではありますが、デメリットとしては、一般にCVポートといわれる器具を皮膚の下に留置する手術を行う場合があったり、カテーテル挿入部から菌が入り込むと感染症にかかりやすいので、常に清潔を保つ必要があります。
経管栄養と静脈栄養の選択
どの栄養方法を選択するかは、患者の具体的な健康状態、栄養のニーズ、および治療の目標に依存します。経管栄養は消化管が機能している場合の方が好まれますが、消化管を使用できない場合や、特定の医療条件下では静脈栄養が選択されることがあります。
管理とケア
経管栄養や静脈栄養を行う場合、適切な管理とケアが必要です。これには、栄養溶液の選択、給餌スケジュールの設定、チューブやカテーテルのケア、合併症の監視が含まれます。栄養療法は、管理栄養士、医師、看護師などの医療チームによる綿密な監視の下で行われるべきです。
経管栄養や静脈栄養により、口から食べることができない患者でも必要な栄養を確保し、健康状態の維持や改善を図ることが可能です。本人や家族がこれらの方法について十分に理解し、医療チームと協力して適切なケアを提供することが重要です。
栄養摂取とACP(アドバンス・ケア・プランニング)の関係性
価値観と医療意思決定: 本人は、生活の質、延命措置、自立性など、自分の価値観に基づいて医療意思を決定します。人工栄養支持の利用について事前に検討し、自身のACPに組み込むことで、その意思が将来的なケアに反映されます。
緊急事態への準備: 重篤な病状や事故により、急に栄養摂取方法に関する決断が求められることがあります。このような状況では、本人が意思決定を行うことができない場合が多いため、ACPは患者の希望が尊重されるよう事前に準備しておくことが重要です。
家族やケアチームとのコミュニケーション: ACPは、本人の意思を家族や医療チームと共有する機会を提供します。これにより、本人が口頭で意思を伝えられなくなった場合でも、その希望に基づいたケアが実施されることが保証されます。
急な選択が迫られる状況への対応
事前指示の明確化: 本人が事前に明確な指示を残しておくことで、急な医療判断が必要になった際に、その指示に従って迅速な意思決定が可能となります。
代理意思決定者の指名: 患者は、自分の医療に関する意思決定を代わりに行うことができる信頼できる代理人を指名しておくことができます。この代理人は、緊急時に本人の意思に基づいた決定を支援します。
状況の変化への柔軟性: ACPは、本人や家族が状況の変化に応じて適応し、必要に応じて計画を再評価するためのフレームワークを提供します。これにより、未予期の状況においても患者の希望が尊重されるようにします。
栄養摂取に関するACPのプロセスは、本人とその家族にとって、将来の医療に関する不確実性を減少させ、安心感を提供します。事前に意思を明確にしておくことで、急な選択が迫られた際にも、本人の希望に沿った医療が提供されるようになります。
